純音聴力検査シミュレータソフトウェアの使用説明
聴力検査シミュレータ(SimuAudio ver 2.6)の解説ページです。本シミュレータは以下のような特長を持ちます。
- 純音聴力検査をマスキングを含めて実践することにより、その理解・習得をサポートします。
- ゲーム感覚で利用できます:中断・再開のためのセーブ・ロード機能を実現しました。
以下では聴力検査シミュレーションを「ゲーム」と略します。
- 低音部を中心とする外耳道閉鎖効果(伝音障害とは相殺)をシミュレートします。
- マスキング可視化機能:マスキングの様子をリアルタイムに見ながら進めることができます。
- 骨導プロフィール表示機能:プラトー法を可視化しつつ検査を進めることができます。
- 正解表示ON・OFF機能:随時途中で正解を見たり隠したりしつつ進めることができます。
- 補助反応インディケータ表示機能:聴取反応が右耳・左耳どちらでの聴取によるものかを表示できます。
- 気導マスキングプロンプト機能:気導検査時のマスキングが必要と考えられる場合、警告を表示します。
- 安全なマスキングレベルの表示機能:オーバーマスキングとならないレベルを示します。
※聴力検査・マスキングの詳細については成書(日本聴覚医学会編「聴覚検査の実際」など)を御参照下さい。
シミュレータ画面の説明
シミュレータ画面は操作パネル(@)、聴力検査画面(A)、マスキング音圧表示・プロフィール切替画面(B・B’)の3つに分かれます。
- 操作パネル(@)で設定の変更・正解表示・ゲームとしてのセーブ/ロードを行います。
- 聴力検査画面(A)で仮想オージオメータを操作して聴力測定(閾値測定)を行います。
- 最初はマスキング音圧表示画面(B)が表示されます。左右の検査音・マスキング音の様子が手に取る様に分かります。
これはMasqueVue ver 5.1A (Masking Visualizer)のマスキング可視化機能を統合したものです。
マスキング可視化のコンセプトや表示される記号についてはマスキングソフト解説初級編ならびにマスキングソフト解説中級編を参照して下さい。
- Bを骨導マスキングプロフィール画面(B’)に切替えると骨導検査中にマスキング音圧と測定閾値のプロフィールをメモして行くことができます。
プラトー法による閾値決定を視覚的に行うことができます。
操作パネルの説明
- 問題選択(@)でNo1からNo13までの問題を選択して【New Gameボタン】を押すことで新たなゲームを開始します。
(これを行わないと問題がロードされないので御注意下さい。)
- 【サポート表示切替ボタン】(A)でマスキング音圧表示画面と骨導マスキングプロフィール画面を切替えます。
- 左右反応補助表示(B)をONにすると右耳・左耳どちらで聞こえているのかを示す補助インジケータを表示します(マスキング音圧表示画面に出ます)。
- 正解表示(C)ON/OFFで随時正解を表示したり隠したりできます。
(最後に正解が出て点数が付くようなゲームではありません。)
正解はオージオグラムの背景に点滅表示されます。正しい閾値を入力してある部分では隠されて見えないようになっています。
従って、点滅が見える部分が正解と異なると分かります。
また、マスキング音圧表示画面には正解の気導・骨導閾値と共に蝸牛固有能(かたつむりマーク:マスキングソフト解説中級編参照)も表示され、
骨導マスキングプロフィール画面には選択された検査側・周波数における正しいプロフィールが骨導・気導ともに表示されます。
- 【Save Gameボタン】で、ゲームは何時でもファイルにセーブできます。(D)
- セーブしたファイルを選択して【Load Game Fileボタン】でロードすれば、途中からゲームを再開できます。(E)
聴力検査画面の説明
- 気導・骨導/検査側(左右)選択ボタン(A)
- 閾値設定ボタン(B):閾値を決定(@)・スケールアウトを決定(A)・決定をキャンセル(B)します。
注意:骨導閾値はマスキング無(<>)とマスキング有([])が別々に登録されます。
それぞれマスキングをOFFに(Mask OFFをクリック)した状態・ONに(それ以外のマスキング音圧をクリック)した状態でキャンセルできます。
- プロフィール記入ボタン(C):骨導検査の際にマスキング音圧と測定閾値の関係をメモします。骨導マスキングプロフィール画面に表示されます。
- 周波数選択部分(C):検査音の周波数を選択します。緑色のマークをマウスでクリックして下さい。
- 検査音圧選択部分(D):検査音の音圧を選択します。水色のマークをマウスでクリックして下さい。
- マスキング音圧選択部分(E):マスキング音の音圧を選択します。灰色のマークをマウスでクリックして下さい。
- 反応表示インジケータ(D):被験者が反応すると点灯します。
- キーボードによる操作も可能です:まず、聴力検査画面のどこかボタン以外の部分(オージオグラム内など)をクリックすることによりキー入力可能となります。
【↑ キー】・【↓ キー】により検査音の音圧を上下します。
【shift + ↑ キー】・【shift + ↓ キー】によりマスキング音の音圧を上下します。
【← キー】・【→ キー】により検査音の周波数を変更します。最大・最小周波数に到達した後は1,000 Hzに戻ります。
【Enter キー】により閾値を決定します(【OKボタン】と同じ)。
【shift + Enter キー】によりスケールアウトを決定します(【s.o.ボタン】と同じ)。
【Escape キー】により決定をキャンセルします(【Cancelボタン】と同じ)。
【M キー】によりマスキング音圧と測定閾値の関係をメモします(【Memoボタン】と同じ)。
シミュレータソフトウェアの使用手順
ここでは、全周波数で気導・骨導閾値ともに0dBである場合を例に説明します。これはシミュレータ操作法の解説を目的とするものなので、
実際には必ずしもこの順番で検査を行わなくとも構いません。
マスキング無しでの気導閾値測定
- まずはマスキング音を負荷せず(MaskをOFF)に両側の気導閾値を測定、記録します。
マスキング無しでの骨導閾値測定
- 引き続きマスキングを行わずに両側の骨導閾値を測定します。
- 1000Hz以下の周波数で0dBにならないことが分かります。
- これは「外耳道閉鎖効果」による交叉聴取(陰影聴取)によるものです。極めて単純な例においても骨導マスキングが必須であることが理解されます。
気導マスキングの必要性チェック
- この例では気導検査にマスキングは必要ありませんが、本シミュレータには気導閾値測定でマスキングが必要と考えられる場合それを示すインジケータがあり、周波数表示部分にオレンジ色の点滅が出ます。
- これは、ユーザが入力した無マスキング骨導閾値・気導閾値を参考に表示しています(正解データからではありません)。
- 下記にもありますが、このプロンプトは万能なものではなく、参考程度とお考え下さい。
マスキングを加えた上での骨導閾値測定
- 次にマスキング音を負荷して骨導閾値を測定します。全ての骨導閾値が0dBとなります。骨導閾値検査にマスキングは必須です。
- 本シミュレータには安全なマスキング音レベルを表示する機能があり、マスキング音圧表示部分に水色の点滅が出ます。
- 但し、これもユーザが入力した無マスキング骨導閾値から推定して表示しているものであり、やはり万能ではありません。参考程度とお考え下さい。
実際に使用して行く上で遭遇する事柄について
- 本ソフトウェアは聴力を蝸牛固有能・固有気骨導差(オージオメータの性能と無関係な固有のパラメータ:マスキングソフト解説中級編参照)で規定し、
仮想オージオメータによって閾値を測定するという、実際に起こる現象に合わせたシミュレーションとしています。
- 従って実際の聴力検査で起こるトラブルも忠実に再現されます。
- 正解のオージオグラムにどうしても到達できない場合も出てきますが、どの様な場合にそうなるかを理解して下さい。
- 気導マスキングプロンプト機能は便利ですが、万能ではありません。どの様な場合にそうなるでしょうか?
- 安全な(オーバーマスキングとならない)マスキングレベルのプロンプト機能も便利ですが、その範囲内ではマスキングが不十分な場合にも遭遇するはずです。
- 本ソフトウェアは決まった手法を叩き込むのではなく、自由にいじってみることによりユーザ自身が理解して行くというコンセプトに基づいています。分からないことがあれば経験者の方に質問して(できれば一緒に本ソフトウェアをいじってもらって)習得しましょう。